
こんにちは、れおです。
本日は“湯温”です。
湯温は挽き目や注ぎ方などに比べて若干除け者にされているなぁと個人的には思うのですが、実は湯温がコーヒーの味わいを作る上で一番と言っても良いくらい重要な要素を占めています。
本日はそんな湯温が持つ力を詳しく解説しますので、お家コーヒーの向上に役立てて頂けると幸いです。
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溶解速度
温度の影響を解説する前に一つ誤解を解いていきたいと思います。
コーヒーの抽出は最初に酸味が溶けて、次に甘さ、そして後半に苦味や渋みといった雑味が溶けてくる
と言った簡易モデルを聞いたり見たことはございませんか?
実際のところ抽出分解検証(1投ごと別の容器に注いでどんな液体が抽出されているのか)を行ってみると正にその様な流れに感じます。
しかしながらよくよく考えてみてください。ある程度水に浸しておいて、ちょっと時間が経ってから抽出される成分というのはおかしいと思いませんか?普通水に触れた瞬間に溶けますよね?
そうなのです。実はすべての成分は抽出の初期から溶け出しています。
しかしながら成分によって溶解速度というものが異なる為その様に錯覚してしまうわけです。
では何が溶け出しやすさに関わっているかというと、分子量の大きさです。分子量が小さい方が早く溶けます。
この場合、酸味やアロマの揮発性分と言った物は比較的分子量が小さい為溶解速度が早くなります。逆に渋みや苦味といった成分は非常に分子量が大きい為抽出に時間がかかる。
そしてそれら要素を感知できるにはある程度の量が必要であるがために時間のかかったコーヒーには苦味や渋みといった成分が支配的になると言ったことです。
溶解度
お気づきですか?今回は長いですよ(笑)
次に溶解度について解説します。
溶解度(ようかいど、solubility)とはある溶質が一定の量の溶媒に溶ける限界量を言う。飽和溶液の濃度である。通常、溶ける溶質の質量[g]や、飽和溶液100 gに溶けている溶質の質量[g]などで表す。本来は無名数であるが、一般に[g/100g-溶媒の化学式]等の単位を付して表す。この場合、溶媒が水なら[g/100g-H2O]となる。溶解度は温度によって変化し、固体に関しては、例外もあるが、温度が上がると溶解度が上がるものが多い。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/溶解度
要は溶けやすい溶質もあれば溶けにくい溶質もあるよねということです。
引用:https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_001083.html#:~:text=水の温度が20,476gも溶けるのです%E3%80%82
学生の頃理科の実験で覚えてる方もいらっしゃるかもしれませんね。
砂糖は水100gに対し、温度上昇によって溶解度が著しく向上していきます。
しかしながら塩に関しては温度をいくら上げても横ばいです。
これがコーヒーにも当てはまるわけです。
温度が与える影響
やっと本題です。
上記から推察いただける様に高い温度で抽出したコーヒーと低い温度で抽出したコーヒーとではそれぞれに傾向があるわけです。
簡単に検証をしてみました。
使用豆:ニカラグア ウォッシュド 粉量:12g 湯量:200g BR 1:16.6
- 24clicks 85℃ TDS 1.27%
- 25clicks 90℃ TDS 1.26%
- 26clicks 95% TDS 1.24%
挽き目をコントロールすることで可能な限りTDSとEYを近づけ、湯温によるテイストの違いを見てみました。
1のコーヒーは酸味がかなり鈍く感じ、甘さと口当たりの柔らかさを感じました。
シュガーブラウニングがキャッチしやすく、エンザイマティックの割合が少なく感じます。
2のコーヒーは程よく酸味の輪郭が出ており、シュガーブラウニング、エンザイマティック共に感じられました。口当たりは1に比べるとやや細く感じます。アフターに少しの渋みを感じる。
3のコーヒーはかなり酸味がシャープに出ており、ティーライクなボディ。アフターに渋みとほのかな苦味も感じられました。
これらからわかる結果として、上記の溶解速度、溶解度を絡めて考えると、どうやら酸味は溶解速度が著しく早くかつ温度上昇による溶解度も向上していることから、酸味は温度依存性の高い成分(=高温ほど感じやすい)だということがわかります。
苦味や渋みなども溶解速度は遅いものの、温度依存性(=高温ほど感じやすい)があることが確認できます。
逆に質感を形成する成分は温度依存しない(=高温低温どちらでもいい)ということがわかります。そして質感と湯温には大きな関係性があります。
水の粘性
液体は高温になる程、粘性が弱くなります。
その為水にも粘性があり、温度が上がるにつれて粘度は治まっていきます。
粘度は流体の流れやすさを表わします。粘度が大きいと流れにくくなります。
水は小さな分子にもかかわらず水素結合による強い引力が働くため粘度は大きい。
液体では高温ほど粘度は小さくなりますが、とくに水では、沸点の100℃での値は氷点の0℃のときの16%しかありません。わずか100℃の間で、物理的な量がこのように大幅に変化するのは珍しい例といえます。
また、温度と圧力に対する粘度の変化は単純ではありません。粘度は加圧により低下しますが、50MPa(メガパスカル)程度以上の圧力をかけると逆に増加します。
高圧により粘度が低下する性質は、消防の放水、水による物体の研磨や切断に応用されています。
引用:https://media.aqua-sphere.net/<水の科学10>水の粘度は温度が高いほど減少する/#:~:text=水は小さな分子に,珍しい例といえます%E3%80%82
引用:https://d-engineer.com/fluid/nendo.html
以前、純粋な私はアイスコーヒーを作るなら水でドリップしたらいいじゃないかと思い、冷水を粉に注いでみました。その結果面白いことにお湯抜けがものすごく悪かったのです。
冷たい水と白湯を飲み比べていただくと感じますが、明らかにウェイト感や粘性が違うことが感じられるかと思います。
つまり、粘性の高い(温度の低い)お湯によって抽出された成分かつ、質感形成される成分は温度依存しないため低温でもしっかりと抽出されます。冷水または常温水を使用して抽出したコールドブリューは滑らかな口当たりと甘さが特徴的ですよね。
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大会に興味がある方ならご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、抽出後半で湯温を低下させるのはこのことが原因だったわけです。
つまり変温抽出を行うことにより、終始出続けるネガティブな要素を著しく低下させることができるというわけです。
抽出温度とテイストの関係性
先の検証により、大まかな成分の温度依存性がわかりました。
上記から簡潔にまとめると
高温抽出の場合
- 酸味の強度が高くなる
- 苦味や渋みの割合が増える
- エンザイマティックアロマがキャッチしやすくなる
- 質感が軽くなる
低温抽出の場合
- 酸質が鈍くなる
- シュガーブラウニングスイートネスがキャッチしやすくなる
- 口当たりが柔らかくなる
- 質感強度が強く感じる
- ファーメントアロマをキャッチしやすくなる
- 苦味、渋みを抑えやすくなる
この様な特徴が考えられるかと思います。
コーヒーの記事や本を読むと低温ほど酸味が感じられる様な記載があるかもしれませんが、それは収率の観点からみた憶測に過ぎず、温度には収率以上にテイストを大きく変える性質があることがわかります。
また収率に関してはこちらの記事もよろしければ合わせてお楽しみください。

理想的な抽出温度の考え方
ここでは豆に対しての湯温設定アプローチ方をご紹介します。
まず、湯温と酸味の強度、そして質感というのは非常にリンクしていることがご理解いただけたかと思います。
今回はそれら情報を活かし、自分が意識していることをご説明します。
ナチュラルプロセスの場合
発酵系の代表格であるナチュラルプロセスのコーヒーは好気性発酵により、酢酸のニュアンスが強いコーヒーが多いです。
酢酸は非常にシャープな酸質を持っており、低濃度ではライムの様なキレのある心地良さを感じますが、高濃度ではあまり好ましくない印象を受けます。
その為その他のリンゴ酸やクエン酸などの比較的溶け出しやすい酸味を十分に取り出してあげた方がカップバランスは良くなります。
私の中の基準値だと88〜90℃ほどで淹れることが多いですね。
まず89℃で淹れてみる、その後酸の輪郭と甘さのバランスを見て上げるか下げるかを考えると言った具合です。
ウォッシュドプロセスの場合
ウォッシュドプロセスの場合は酸味が鈍くなったり潰れたりするのを避ける為比較的高めに設定することが多いです。
あとはそのコーヒーの特徴に合わせて湯温を合わせると言ったことをします。
例えば、ウォッシュドのエチオピアなどのアフリカ豆はリン酸が含まれているが故にキャラクターが明るく感じるだけで、酸味の強度は極端に低いものが多いです。
その様な豆には91〜92℃くらいの高い温度を使用します。
ケニアなら品種によって変えます。
例えばSL28のみと言ったロットなら先のエチオピア同様高め、SL28の他、Batian, Ruiru11が入ってきたりすると湯温は90〜91℃ほどに。
その他中南米豆もナチュラル同様、酸味の強度と甘さのバランスを考え、湯温を設定しますが、大体90〜92℃あたりがベターかなと個人的には思ってます。
パルプドナチュラル、ハニープロセスの場合
PN豆はナチュラルほど酢酸のニュアンスはありません。
非常に柔らかい口当たりと甘さが特徴的で酸味の強度もナチュラルより強いと感じます。
しかし発酵豆に比べてインパクトに欠ける為エンザイマティックアロマをしっかり引き出すという意味も込めてウォッシュド同様90〜92℃程で淹れることが多いです。
アナエロビックプロセスの場合
アナエロビックは無酸素状態での発酵を意味します。
その為丁寧に温度管理がなされたアナエロビックは酢酸菌が生成できず、乳酸が発生します。
乳酸は酸質が丸く、ボディに富んでいる酸味です。
イメージだとナチュラルがドライフルーツだとするとアナエロビックはコンポードフルーツと言った印象でしょうか。
酢酸が強くないアナエロビックなら90〜92℃ほどで抽出していいと思います。
仮にかなりシャープな酢酸がある場合は87〜89℃ほどが良いと思います。
アナエロビックのコーヒーは発酵が強く、かなりの負荷が生豆にかかります。それが故にキャラクターが暗くなってしまうことがある為そう言った意味でも高温を使うというのは有効だと言えます。
温度管理の方法
抽出温度はコーヒーにかなり大きな影響を与える為温度管理に関しては少しばかり神経質になった方がいいかなと思います。その為ケトルに投資するのは非常に有効です。
ここでは私のおすすめケトルをいくつかご紹介します。
・Brewista
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メリット
- 持ち手が非常ににぎりやすい形状
- かなりの角度がついたグースネックにより注ぎが安定する
- 温度が40℃から1℃刻みで選択できる
- 細口のため細くお湯が出せる
デメリット
- 価格がやや高い
- 保温をしすぎると故障につながりやすい
- 角度のついたグースネックだからこそやや攪拌がしにくい
Brewistaは私も2台持っているくらい愛用しています。僕は静かに攪拌せずに注ぐのが好きなので、非常にフィットしますが、ガシガシ注ぎたい方にはあまり向いてないのかなとも思います。
一つ注意事項としては“保温のしすぎ”です。経年劣化もあると思いますが保温を幾度も行ったところ温度が上がらなくなってしまうということが起きました。
・BONAVITA
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メリット
- 素材が厚くできているため温度が下がりにくい
- 持ち手が手にフィットしやすい
- 湯量が出るため攪拌しやすい
- 60℃から1℃単位の温度設定
デメリット
- やや重い
- 細口ではないため湯量の調整がやや難しい
・Fellow Stagg EKG
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メリット
- 緻密に計算された持ち手によってにぎりやすい構造
- 細口による湯量のコントロールのしやすさ
- スタイリッシュなデザイン
- 57℃から1℃単位での温度設定
デメリット
- かなり傾けないとお湯が出てこない
- ケトルの構造上縦に長いため注ぎが難しい
・山善電気ケトル
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メリット
- 高機能で破格の安さ
- 細口で注ぎやすい
- 60℃から1℃単位の温度設定
デメリット
- 注ぎのお湯切れが悪い
- ネック幅が短い
- お湯のコントロールがやや難しい
山善は価格帯がかなり抑えられかつ機能性に富んでいるため、ちょっとコーヒーに興味出てきたという方にすごくオススメです。
実際にカフェで使われてるところもあるくらいです。
ただ本格的に淹れたい方には、BrewistaやFellowをオススメします。
その他電気ケトルをお持ちでない方は温度計を使用するか、沸騰したお湯を注ぎやすいケトルに移し替え、約1分ほどで90℃前後になるためその様な調整をお勧めします。
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まとめ
コーヒーの抽出温度は、その味わいに大きな影響を与える要素の一つです。適切な温度管理を行うことで、より美味しいコーヒーを楽しむことができます。自分の好みやコーヒー豆の特性に合わせて、抽出温度を調整してみてください。
