こんにちは、レオです。
今回はコーヒーのテイストバランスを大きく方向付ける“濃度”について。
皆さんはコーヒー屋で買った豆を実際に淹れてみたら、お店の味と全然違うといった経験はございませんか?
それら原因は淹れ方や器具といった要素ではなく、濃度が違うといったことが原因が多く、それらエラーは実は簡単に改善できてしまいます。
本記事では、コーヒーの味わいを決定付ける濃度の重要性と考え方を詳しく解説し、美味しい一杯を淹れるためのヒントを提供します。
コーヒーの濃度とは
濃度とは文字通り、その目的となるものの“濃さ”を表すものです。
仕事柄たくさんのお客様のコーヒーの好みをお聞きする中で、濃いコーヒーが好き、薄いコーヒーが好き、アメリカンなどと答えてくださる方が多々いらっしゃいます。
それくらい飲料における濃度というのは、テイストを構築する上で非常に重要であるわけです。
ではコーヒーにおいて何が濃度を決定付けているのかというと、
ズバリ!粉とお湯の比率です。
コーヒーにおける粉とお湯の比率のことをBrew Ratio(以下BRと記載)と言います。
どの様に表すかというと、20gの粉を使用し、300gのお湯で抽出した場合、粉量を1としてお湯の量が15倍なので、この場合1:15の比率となります。
濃度の影響
ここでは、具体的に比率の低いコーヒー(濃い濃度)と比率の高い(薄い濃度)での味わいの違いについて解説します。
解説の前にコーヒーの濃度を表す用語についてご説明させていただきます。
TDS: Total Dissolved Solids
TDS: Total Dissolved Solids
濃度の濃さはTDSという濃度の指標で表すことができ、身近なものだと水質検査などで使用されていたります。コーヒーでは、抽出された液体にどれくらいコーヒーの固形分が溶解されたかを%で表した数値です。つまり、TDSが高いほど固形分が多く溶けているわけですから濃度は濃くなりますし、TDSが低ければ、薄い濃度であるということです。
- TDSが高い:酸味、苦味、甘味といったテイストが強くなり、質感(ボディとテクスチャー)が重くなる。濃すぎる濃度帯は口内刺激をもたらす。
- TDSが低い:テイストは弱くなり、質感は軽くなる。低すぎる濃度帯は水っぽくなる。
如何にも専門用語的な言葉になるため、TDSに対してやけにフォーカスするバリスタも多くいますが、あくまでも濃度を数値化したに過ぎないため、この数値が美味しさの絶対値ではありません。一応SCAAの方ではTDS1.15~1.3%が望ましいとの記載がありますが、全てのコーヒーに当てはまるわけではないのでご注意ください。
引用:https://sca.coffee/sca-news/25/issue-13/towards-a-new-brewing-chart
濃度においてややこしいのが、比率を変えた時に抽出の進み具合が変わるという点です。
粉量が多いほど溶媒の比率が小さくなることで成分を取り出す効率が悪くなり、少ないほど、溶媒の比率が大きくなるため、抽出効率が上がるためです。このポイントを頭に入れておくと微調整が楽になるので、頭の片隅に置いておいてください。
濃度の調整方法
濃度に関しては基本的には比率“Brew Ratio”でコントロールすることをお勧めします。
濃度はテイストの強弱を決定づける大きな要因です。
ある程度のBRを決定付けたら、どのくらいの量の抽出液が欲しいのかを定めた上で、実際の粉量と湯量を決めていきます。
粉にお湯を注ぐと、注いだ分だけお湯が落ち切るわけではなく、粉の2~3倍のお湯は粉に吸収されます。そのため同じ1:15の比率でも欲しい抽出液量が200gである場合は、200g以上のお湯を使用する15gの粉量に対して225g注ぐといったレシピが最適でしょう。
具体的な調整方法ですが、仮に1:15(20gの粉:300gのお湯)を基準にしたとき
- より薄くする場合:1:16 20gの粉に対して320gのお湯
- より濃くする場合:1:14 20gの粉に対して280gのお湯
単純に使う粉が多い、または注ぐお湯の量が少ければ濃い濃度のコーヒーになりますし、
粉量が少ない、または注ぐお湯が多いほど薄い濃度のコーヒーになります。
時折濃度を挽き目によって調整する方もいらっしゃいます。確かに挽き目を動かすことによってTDSも上がり下がりします。しかし挽き目によって動くのは抽出の効率であるため、成分の出方が大きく変わってしまいますので、単純に抽出液の濃さを決めるならBRでコントロールするのが良いでしょう。
挽き目に関しては過去のこちらの記事をご参照ください。
ここまでご覧いただいた方の中には、もしかしたら
“あれ?実はコーヒー淹れるときっていちいちグラム計らなきゃいけないの?”
と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
その通りです!まさにご自宅のコーヒーとお店で飲むコーヒーで味が違うのは、ちゃんとグラムを測るという点なのです!
偶にスプーン何杯分かと聞かれたりしますが、コーヒーの粉は焙煎度や物によって比重が変わります。スプーンは体積で測っている物なので、重量に対して相関性がありません。
その為必ず重さで測る!ここほんと大事!!
抽出器具の選定や注ぎ方などはその次で結構です。まずは適切な量の粉とお湯を測って淹れるということを意識しましょう。
わざわざ高いスケールやタイマーを買う必要はありません。
ご自宅にあるキッチンスケールや携帯のタイマーで十分です。仮にもっと突き詰めたいという方にはHarioのスケールやacaia、Timemoreのスケールなどがお勧めです
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理想的な濃度
コーヒーは嗜好品の一つであるため、全ての方にフィットする濃度を上げるのは不可能ですが、ある程度レンジを持たせ、そこから好みの濃度に調整していくことをお勧めします。
その中から今回はフィルターコーヒー(フレンチプレスなども含む)とエスプレッソにおいて理想的な濃度を記載します。
フィルターコーヒーの理想濃度
フィルターコーヒーの理想的な濃度帯は1:12.5〜1:17の間ではないかなと思います。
こう記載するとかなり差がある様に感じますが、大体粉6~8gに対してお湯100gという計算になります。なので、粉1gでも変えると印象は全く異なるということです。
これは2012年のWorld Barista Championである井崎 英典さんの著書でも明記されております。
かなり実践的な内容盛り沢山な著書ですので、お家コーヒーを充実させたい方にはぜひ一度お手にとっていただきたい一冊です!
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エスプレッソの理想濃度
エスプレッソの場合、注いだお湯ではなく、抽出された液体での比率を考慮します。
エスプレッソの場合はBR1:2~1:3ほどがお勧めです。
多いのは大体1:2(20g詰めて40gの抽出量)くらいではないでしょうか。
フィルターに比べてかなり濃いことがここで分かりますね。
だからこそたくさんのミルクを淹れたラテでもしっかりとコーヒーの味わいが感じられます。
逆にフィルターコーヒーにミルクを注いだカフェオレがかなりミルキーになるのもご理解いただけたかと思います。
コーヒーの濃度とテイストバランス
ここまで濃度について記載しましたが、実際に濃度によってテイストがどの様に変わっていくのかをご説明いたします。
高濃度の場合
・シュガーブラウニングスイートネスが感じやすい
焙煎によって生じたキャラメライズされた(candy like, caramelied, chocolate like)甘さが分かりやすくなります。これら成分は揮発成分の中でもかなり分子量が大きい物である為、強調するにはある程度の濃度が必要になります。
・ウェイト強度が上がる
舌の上に乗る感覚重量が上がります。より厚みのある液体に感じます。
・テイストが強くなる
酸味、苦味、甘味の強度が大きくなります。この場合、抽出効率は下がる傾向がある為やや未抽出寄りに傾きます。
・エンザイマティックアロマがキャッチし難くなる
Fruity, Floral, Herbalといったフレーバー(アロマ)がシュガーブラウニングスイートネスによってマスキングされます。
ここで注意して欲しいのが減少しているわけではないという点です。あくまでもシュガーブラウニングスイートネスが大幅に強調されたことで分かりづらくなるということです。
低濃度の場合
・酸味が感じやすい
濃度が低ければ低いほど酸味がキャッチしやすくなります。これは酸味成分の分子量が小さいことが原因で、低濃度帯は分子量の大きい成分が少ないことから相対的に酸味が感じやすくなります。
・エンザイマティックアロマが感じやすい
酸味と同じでエンザイマティックアロマは分子量が小さく揮発性物質である為相対的に感じやすくなります。
・ウェイト強度が下がる
粉に対しての水の割合が増えるわけですから、質感はどんどん弱くなっていきます。しかしながらお湯の割合が多いので成分の抽出は進んでいきます。
・テイストが弱くなる
抽出効率が上がる為複雑味をもたらせますが、全体のテイストは弱くなります。とてもクオリティの良い豆であれば耐えることができますが、そうでない場合液体が冷めるにつれてどんどん骨格が弱くなってしまいます。
結論
コーヒーの抽出において濃度というのはテイストを大きく変える力がある為非常に重要な変動要素の一つです。濃度に対しての理解を深め、お家コーヒーの向上に役立てて頂けると幸いです。
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